Category : マネックス

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21時間前

注目銘柄の押し目買い PART1(サービス・セクター編)

日経平均2万円というのはシンボリックな値かもしれないが、数字自体に意味はなく、1万9998円と2万円の差はわずか2円。そこにどれだけの意味を見出すかは、ほとんど哲学論争、もしくは空虚な概念論であって、株価が2万円という値をつけないことに少なくとも経済的な観点からは特段の意味はない。ファンダメンタルズ面からは日経平均2万円はじゅうぶん正当性があるし、PERの過去平均である15倍を基準に考えれば、2万1000円でも不思議はない。

それが前回のレポートで述べたことだ。ファンダメンタルズからは妥当な値であっても、今の市場環境ではそこまでの評価を与えにくい。不透明材料をリスク要因として割り引く必要があるからだ。割引率が大きいということはPEで高いマルチプルを付与できないということである。今週のマーケット展望で述べた通り、この先も波乱含みの展開が予想される。しばらくマーケット全体が持続的に上昇するような相場展開に賭けるのはリスク対比で賢明なストラテジーとは思えない。ここは個別銘柄の押し目買いを検討する局面と考える。

「押し目待ちに押し目無し」を地でいくような相場が続いてきたリクルートHD(6098)に、やっと押し目がきた。先週末に一時520円(8%)安の5,730円まで下落した。きっかけは、グーグルが求人情報サイトの提供を開始すると発表したことだ。リクルートが米国で買収し展開する「インディード」はいまやドル箱事業に育ったが、今回のグーグルの発表はその「インディード」に正面からぶつかる。競争激化による収益悪化が嫌気された格好だ。

リクルートの株価は週明けの昨日も続落した。25日移動平均を突き抜け75日移動平均で切り返し、陽線で終った。ここでひとつ押し目買いを入れるにはよいタイミングと見る。

リクルートHDの株価推移

出所:ブルームバーグ

リクルートが「インディード」を買収したのは5年前。先行者としての優位性は崩れないだろう。リクルートは、海外展開が難しいといわれる人材派遣などのサービス業で、海外売上高比率が35%を超えるグローバル企業の顔を持つ。リクルートの海外事業の強みは、国内で培ったノウハウである。自前進出にこだわらず、現地のマーケットを良く知る地元企業を買収し、リクルートの経営手法や事業運営の知見を「輸出」するのだ。こうしたタイプの「輸出企業」の事業モデルは、為替に影響される従来型の輸出企業と違って底堅さがある。

海外事業に限らず、リクルートという企業を評価する軸はいくつもある。人材ビジネスはいうまでもなく「働き方改革」というど真ん中のテーマだし、ほかにもシェアリング・エコノミーだったり、ビッグデータだったり、もっとも旬なテーマで買っていける切り口が複数ある。

なによりも、リクルートという企業の価値は、「人」のちからである。昨今、やたらロボットだとかAIだとか、「人と機械の競争」ということが言われる。であれば、これからは何が鍵となるか。「機械」ではない。AIにせよIoTにせよ、「機械」はただのインフラであり、社会の公共財となる。であれば、なおさら、これからはますます、「人」のちからそのものが鍵となる。そうした「人」のちからをフルに発揮して勝てるビジネスをおこなってきたのがリクルートだ。

公私ともに非常にお世話になっている楠木建・一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授がリクルートを評した名言がある。

「リクルートからは経営者が輩出している。経営センスが育つ土壌にあふれているようだ。あの会社には担当という概念がない。入社即、商売してこい、商売を作ってこいと。これが経営人材の出る土壌を作る。」

まさに「企業とは人」である。リクルートのような企業は、そうざらにあるものではない。

リクルートHDは東証33分類の業種別株価指数の「サービス業」で時価総額ウエイト最大の企業である。この「サービス業」セクターで年初来リターンの上位銘柄を見ると、まさに現在の日本が抱える社会問題とそのソリューション(解決)を事業にしている銘柄のオンパレードである。当然のようにそうした銘柄は好パフォーマンスを挙げてきたが、ここにきて調整しているものも散見される。リクルート同様に、押し目を拾うチャンスであると思う。

リンクアンドモチベーション(2170)
エラン(6099)
東京個別指導学院(4745)
M&Aキャピタルパートナーズ(6080)

これらの銘柄を有望と見る背景については、次回のオンラインセミナー「広木隆のマーケット展望ウィークリー」(6/5)で解説するので是非ご視聴ください。ポイントは、人手不足⇒人材派遣、と短絡的に考えないことだ。確かに、サービス業の高パフォーマンス銘柄には人材派遣業が多いが、そうした状況がこの先、何年も続くかどうか。より本質的な構造問題に目を向けたほうがよいと思う。

また、「注目銘柄の押し目買いPART2」では、ライオン(4912)、イビデン(4062)、任天堂(7974)、OLC(4661)、東レ(3402)、そのほか複数の銘柄について語るつもりである。そちらも併せてご参考にされたい。

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2日前

2年ぶりに最高益が期待される銘柄は

日本経済新聞の集計によると上場企業の2017年3月期の決算は、急ピッチで進んだ円高の影響で売上高が前の期に比べ3%減り減収となったものの、2年ぶりに増益となり過去最高を更新となりました。そして2018年3月期は増収増益となる見通しで、前期に続いて最高益の更新が期待されています。

そこで今回は今期に営業利益で最高益更新が見込まれる3月決算銘柄のなかから前期こそ最高益を逃したものの、今期は2年ぶりに最高益が見込まれるものをピックアップしてみました。例えば炭素繊維の苦戦などで前期に4期ぶりの営業減益となり最高益に届かなかった東レ(3402)では、今期は二桁の増益による2年ぶりの最高益更新を見込んでいます。

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6日前

早速、上方修正に踏み切った銘柄は

先月から始まった3月決算企業の本決算発表もほぼ終わりましたが、3月決算企業の本決算発表と並行して12月決算企業の第1四半期決算発表も行われていました。その12月決算企業の第1四半期決算発表も3月決算企業の本決算発表と同じく一巡となりましたが、なかには通期の業績予想を早速、上方修正した銘柄も幾つかみられます。

そこで今回はこの第1四半期から通期の営業利益の上方修正に踏み切った12月決算銘柄をピックアップしてみました。例えばカメラやプリンターといった既存事業が回復基調で、有機ELディスプレー向けの装置も好調なキヤノン(7751)では通期の営業利益を150億円引き上げています。また、ポーラ・オルビスホールディングス(4927)と堀場製作所(6856)では上方修正で最高益更新の可能性が一段と高まっています。

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7日前

日経平均2万円の前に「壁」はあるか?

最近の市場の話題は2つある。ひとつはボラティリティの低下。シカゴのオプション市場が織り込む市場変動率をもとに算出されるボラティリティ・インデックス(VIX指数)は記録的な低水準。これについては、こちらのブログ「熱狂なき楽観・恐怖なき高値」を参照してほしい。ちなみに前回、10ポイントを割り込んだのは2007年1月。その翌月には上海株の急落から世界同時株安がおきた(元祖チャイナショック)。夏にはパリバショック。それをはさむ形で米国株はWトップを形成、リーマンショック前の大天井を打った。行き過ぎたものは転ずるのが必定。ボラティリティの反転上昇は、すなわちマーケットの波乱を意味する。

もうひとつの話題は、日経平均が2万円の大台を前に足踏みを続けていることだ。昨日も米国株高を受けて高く始まった日経平均は128円64銭高の1万9998円49銭を付けた。2万円の大台まであと1円51銭まで迫りながら、ついに達成できなかった。この動きだけをみるといかにも弱い。この理由については、いろいろなことが言われている。僕もその背景について書こうと思ったが、やめた。へそ曲がりだから世間の意見に同調したくないということもあるが、いちばんの問題は、「2万円」にそれほどの意味があるか、ということだ。「1万9998円」と「2万円」、実質的に何が違うのだろう。ここまで来たら、少なくとも経済的な価値は同じではないか。

「底なし沼と普通の沼はどう違う?」「底がないか、あるかですか?」「底がない沼なんてない。ようは人間の幻想の有無なんだ」(森博嗣「誌的私的ジャック」)

2万円にあと1円51銭まで迫りながら押し返されると、なにかそこに見えない「壁」のようなものを感じて、ことさら騒ぎになるが、それは人間が勝手に生み出した幻想にすぎない。

確かに相場は「理外の理」というような理屈を超えた不可思議な動きをすることがよくある。高値というものは、たいてい大台の前に来る。日経平均自体、1989年12月末の大納会でつけた3万8915円が史上最高値。当時の雰囲気は先高観にあふれ、そこまで行けば4万円の大台は間違いないと誰もが思っていたが実際には届かずに終わった。相場全体の高値に先駆けること2年余り前、ちょうど30年前の4月が証券株の高値だった。野村證券の高値が5,990円。6,000円の大台にあと1ティック、10円届かず失速した。それが野村の史上最高値である。当たり前だが、以降一度もその水準に並ぶことはなかった。

野村證券の株価推移

出所:ブルームバーグ

「鬼より怖い一文新値」という相場格言がある。以前の高値を抜いたのに、大きく抜くことができず、わずか一円だけ更新してそれ以上は上がらないのは強烈な株価の天井になるという意味だ。いわゆるWトップのような状況だ。あと1ティック及ばずで大台更新が叶わないのは、「鬼より怖い一文新値」の逆だが、この「一文」というところなど、どこか相通じる面がある気がしている。

と、戯言めいたことを書いてきたけど、ここは冷静にデータを見るべき局面だ。

日本経済新聞社の集計によると、上場企業の今期純利益は4%増益。2年連続で最高益更新の見通しである。4%増益とはずいぶん冴えない数字だが、EPSベースでは8%近い増益見通しとなっている。日経平均の1株当たり利益は昨日時点の日経予想で1,393円まで高まってきた。(注:高まってきたのは上方修正されたというわけでなく単に前期の予想が今期予想に置き換えられただけの話である)

ポイントはこの利益をどこまで評価できるか、具体的にはPERで何倍まで買ってやれるか、ということになる。

日経平均がアベノミクス相場開始以来の高値をつけた約2年前からPERを見ると、16.6倍が上限。この間の平均は15倍だが、もっと長い期間の平均をとっても15倍である。アメリカの約150年間の平均をとっても15倍だから、とにかくPERの平均は15倍。これにはちゃんとした理由があって、いつか機会があれば説明したいが、その意味でいまの日経平均1万9000円台後半というのは、フェアバリュー、極めて適正な評価水準、もしくは若干割安だと言える。

3月23日付けのレポートではこう述べている。

<あと1カ月経てば3月期の本決算の発表が始まる。2017年度の業績を織り込みにいけば日経平均は2万円に届くだろう。アナリスト予想の平均であるクィックコンセンサスで日経平均のEPS(1株利益)は1460円。PER13.7倍で2万円である。より保守的な日経予想でも1370円(12カ月フォワードEPS、出所:クィックアストラマネージャー)だ。2万円はPER14.6倍。じゅうぶん無理なく届く水準だ。>

結局、その通りの数字になったということである。PER15倍は過去平均で妥当なマルチプル。いつかは、つける。そうすれば日経平均は2万円どころか2万1000円が見える。

しかし、この業績がコンセンサスになる前の4月の状況を思い出そう。その時点で平均から1標準偏差下のPER14倍は、1万8000円台前半だった。北朝鮮など地政学リスクが高まって相場が売られた時の水準。つまりそういう下押し圧力の強い状況になって、平均マイナス1標準偏差のバリュエーションがついた。上にいくのも、それと同等のインパクトのある状況がアップサイドに必要ということだ。

なぜ2万円の大台が遠いのかと言えば、2万円を買うにはその先のシナリオが必要だから。2万1000円程度までアップサイドのシナリオが見えなければ2万円を買おうとは思わないだろう。2万1000円はPER15倍強。数字の上からはじゅうぶん「見えている」。あとはカタリスト待ちか。

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2週前

米「グラス=スティーガル法」復活リスク:一部金融機関への影響は限定的

● 米国で銀行・証券業務分離法(「グラス=スティーガル法」)の復活が報じられており、足元の米金融機関株の重石となっている
● しかし、現在、銀・証どちらか一方の業務の比率が大きく、業務分離の影響が限定的な金融機関の株式までもマイナスの影響を受けている
● 並行して規制緩和法案も提出されており、米金利も上昇傾向。6月のFOMCに向け、米金融機関には再び上昇に向かう可能性がある

今月に入り、トランプ米大統領など政府関係者が相次いで、銀行業務と証券業務を分離するという「グラス=スティーガル法」を復活させる意向を示した。

この法律は、大恐慌下の1930年代に成立し、1999年に廃止された古い法律である。現在、米国ではこれらの業務を一体で運営している大手金融機関が多い。こうした報道の不透明感で、足元の銀行株価の動きは金利上昇の割には鈍くなっている(図表1)。

しかし以下の理由から、グラス=スティーガル法の復活は実現には時間がかかるとみられる上、以下のようなポジティブ材料もあることから、米金融機関には引き続き上値余地があると考えている。

金融規制緩和案も並行して進められている
4月半ばには、共和党が米国下院議会に「ドッド=フランク金融規制法」の緩和案を提出した(主なポイントを図表2に記載)。これらはまだ修正される可能性が高いが、銀行の貸出を促進するもので、景気拡大の支援材料となる。若干時間がかかったとしても、中長期的には緩和の方向にあると考えられる。

なお、自己資金での有価証券売買などを禁止する「ボルカールール」については、緩和すれば銀行の過度なリスクテイクに繋がるという批判から、当面本格的な議論は期待しにくいだろう。しかし、業界からの要望も強くなっていることから、マーケットメイク(値付け)の機能など一部が解禁される可能性もあるだろう。

分離の影響度が比較的小さい銀行もある
グラス=スティーガル法が復活した場合、金融グループは、証券業務か商業銀行業務(預金や貸出)に特化しなければならない。現在、両方を行っているシティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガンなどでは、商業銀行業務が利益の半分以上を占めるものの、証券業務も3割以上を占める。これらの銀行では、証券業務を分離すれば、当然収益は低下する。

しかし、例えばゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどでは、利益の殆どが証券関連業務で、商業銀行の利益はごく小さい(図表3,4)。たとえ商業銀行業務を売却しても収益への影響は限定的である。にも関わらず、株価は相対的に低い状態が続いている(図表5, 6)。

また、仮に商業銀行主体の地銀やウェルズ・ファーゴなどがごく一部で行っている証券業務をスピンオフしても、商業銀行業務の方が。収益のブレが激しい証券業務よりも収益の質の評価が高いことを考えれば、株式の評価は下がらない可能性もある。

更に、それぞれの事業をスピンオフするときには相応の対価を得る。これらも考慮すれば、全体として株価は懸念されるほどの影響を受けない可能性もある。

6月のFOMCに向け、金利は再び上昇へ
米国の景気は依然として強く、金利は上昇方向にある。6月15日のFOMCで利上げが決定すれば、金利の見通しについて強気の見方が一層高まるだろう。足元では、こうした規制関連の不透明要因で金融機関株の上値は重くなっているものの、6月にかけて再び上昇に向かう可能性が高いと考えている。

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2週前

決算集計速報PART4 市場予想に届かなくても買われた銘柄は

先月20日の安川電機(6506)を皮切りにスタートした3月決算企業の本決算発表も今週に入りピークを迎えています。連日数多くの企業が決算を発表しており、昨日と一昨日だけでも700社を上回る企業が決算を発表しました。そこで今回はTOPIX500採用の3月決算企業を対象に5月10日と11日の決算を集計してみました。

それをみると引き続き市場予想を下回る保守的な会社予想が目立ちますが、そうした銘柄のなかにも決算後に株価が上昇する銘柄が幾つかみられます。例えば10日の取引終了後に決算を発表したトヨタ(7203)の営業利益の今期見通しは市場予想を大きく下回る内容でしたが、翌日の株価は小幅に上昇して取引を終えています。また、会社予想が市場予想に届かなかったテルモ(4543)や三井金属鉱業(5706)、太陽誘電(6967)などでも決算後に株価が上昇しています。

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もう一つのヒント

週明けの決算発表スケジュールは

3月期決算銘柄の本決算発表も本日がピークとなりますが、週明けもまだ多くの決算発表が予定されています。15日は日本郵政グループ3社に加え、メガバンクなどが決算を発表する予定です。

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2週前

日本株 この先の上値余地

北朝鮮情勢の緊迫化に加えフランスの大統領選や米国のトランプ政権の政策などの不透明要因が相場の重石となった4月。そのような「不確実性」の高まりに鑑みて、僕は緊急レポートを出して、株式のウェイトを下げ現金比率を高めるように推奨した。

結論から言えば、波乱は起こらなかった。むしろ、フランス大統領選の第一回目投票が無難な結果となったことをきっかけに4月下旬から急速に値を戻す展開となった。僕の推奨に従って株を手放した投資家は値上がりを獲り逃したことだろう。

推奨が間違っていたとは思わない。今後も同じような局面があれば、迷わずポジションを落とすことを勧める。プロの投資家は、この先の相場が上がるか下がるかを予想して、その方向性だけに賭けるというような投資をしない。なぜなら「予想は外れる」ということを大前提としているからだ。フォローアップのレポートでも述べたが、「下がるから売り」だとは言っていない。「万が一、リスクシナリオが示現したら暴落となる恐れがある」から売るべきだ、と述べた。

では、そのリスクシナリオが実現する可能性はどれくらいか?わからない。だが、わからなくなったら「売り」である。確信度が揺らいだら、いったんポジションを落とす。迷ったら売る。これは自分のなかの鉄則である。自分の信条をお伝えしたまでで、それに従うかは(当たり前だが)投資家ご自身の判断である。

天気予報で「降水確率が80%」といわれれば、傘を持って外出するだろう。それで、雨が降らなければ、「なんだ、天気予報で雨が降るというから、傘を持ってきたのに。天気予報は外れたな」とたいていのひとは思うだろう。でも、天気予報は外れたわけではない。「降水確率80%」という意味は、「雨が降らない確率は20%」とも伝えているのだ。「降水確率80%」でも5回に1回は雨が降らない日がある。相場も似たようところがあって、リスク要因が多くあっても、必ずしも下がるわけではない。

上の天気予報の例と、今回の相場の違いは、天気予報では降水確率が明示的に80%と示されるが、相場ではダウンサイド・シナリオの確率が明示的にわからないところである。発生確率は低いのかもしれない。しかし、万が一起きたら壊滅的なダメージとなる。それをテールリスクと呼び、そもそも発生確率すらわからないことをフランク・ナイトの定義による不確実性ということは既に述べた。何もわからないが、もしも起きたら大変な事態となる。そういう事態は避けるのが賢明である。

ロシアン・ルーレットだと思えばよい。弾倉が6発のリボルバーなら絶対にやらないが、弾倉が100発あればどうか、1000発なら?おそらく何発であろうと、弾に当たる確率が天文学的に小さくてもやらないはずである。確率×リターン=期待値が限りなくおおきなマイナスだからである。すなわち、どこまでいってもギャンブルだからだ。

命を賭けるのと投資は違うというだろう。だが、あなたの資産は大切なものに違いない。それともギャンブル的な発想で投資をしているのですか?

これも、何度も書いたことだが、重要なので、また書いておく。

「ときとして間違った判断が成功に結び付くことがあれば、きわめて正しい判断が失敗に終わることもある。しかし、長い目で見れば、より深く考え抜いたうえでの意思決定は、全体としては望ましい結果につながり、結果そのものよりも、いかに検討を加えて意思決定が行われたかが評価されることになる」(ロバート・ルービン「ハーバード大学での講演」)

これが天才トレーダーの考え方である。もうひとり、天才トレーダーの言葉を紹介しよう。リスク管理についての考え方だ。

● コントロールができないような局面では決してトレードしないこと。
● トレードで最も重要なルールは巧みな攻撃をすることではなく、巧みな防御をすることだ。
● 全てのものはそれを創るのにかかった百倍の速さで破壊されるものだ。十年かかって創り上げたものもたった一日で崩壊する。
● カネ儲けに執着するな。自分が手にしたものを守ることに執着せよ。

ポール・チューダー・ジョーンズの言葉である。どう考えても予想もつかないリスクが満載で、かつゴールデンウィークの休みが控えるなかで自分のポジションをコントロールするのは難しい。ここは守りに徹する局面だと考えた。

投資やトレーディングではリスクをとってリターンを追求することは重要である。と、いうか、それが投資の目的である。しかし、「損を避ける」ということも同じくらい大切である。

「結果的に何も起こらなかったじゃないか」「結局、相場を読み間違ったくせに」「安いところで売らされて頭にくる」 - いろいろな批判は甘んじて受けるが、すべて「結果論」である。「結果がすべて」というひとがいる。僕はそう思わないし、上の例からわかるようにトレードの天才 - すくなくともルービンとチューダー・ジョーンズは決してそう考えないだろう。考え方も、ひとそれぞれだから、決して押し付けるつもりはないので、悪しからず。

さて2万円が指呼の間に見えてきた日経平均の上値余地だが、短期的にはいいところだろう。日経平均は昨日時点で25日移動平均からの乖離率が5%を超え、過熱感も出ている。決算発表が本格化して日経平均の今期予想EPSは1,270円程度まで上昇してきた。これをどこまで評価できるかだが、一昨年(2015年)12月に一時的に2万円を回復した時のPERが15.7倍。さらにその前、6月にアベノミクス相場開始以来の高値、20868円をつけたときで16.6倍である。仮にこれに並ぶバリュエーションを付与できれば2万1000円を超える。16.6倍は実は昨年12月にも一度つけた水準だが、そこから3月まで相場は横ばいで推移した。PERの上限が16.6倍ということである。

向こう3カ月程度(すなわち次の四半期決算発表までのスパンで)アップサイドはここから1,000円程度か。

決算発表も今週で佳境を過ぎるが、ここからは材料難になる。この水準を維持できれば上出来だが、材料出尽くしで戻り売りに押される展開もあり得るだろう。ダウンサイドも同程度あるだろう。

日経平均の変化幅の期待値としてはゼロ程度か。ここで無理にリスクをとりにいく必要はないだろう。押し目を待てばよいと思う。

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2週前

決算発表後に目標株価の引き上げがみられる銘柄は

先月20日の安川電機(6506)を皮切りにスタートした3月期決算銘柄の本決算発表も今週がピークとなりますが、一足早く決算を発表した銘柄では業績や目標株価の見直しもある程度進んだと思われます。そこで今回は先月27日に決算を発表したTOPIX500採用の3月期決算銘柄を対象に決算後に目標株価引き上げがあったもの(足元の株価を上回るもののみ対象)をピックアップしてみました。

例えば決算発表後に株価が急伸した大同特殊鋼(5471)やきんでん(1944)で目標株価の引き上げがみられるほか、反対に株価が急落したオムロン(6645)やアドバンテスト(6857)でも目標株価の引き上げがみられます。また、キッコーマン(2801)やアルプス電気(6770)、ファナック(6954)では決算発表後に2社が目標株価を引き上げています。

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明日の決算発表スケジュールは

3月期決算銘柄の本決算発表も今週がピークとなります。こうしたなか明日も多くの決算発表が予定されています。取引時間中には三越伊勢丹ホールディングス(3099)や東レ(3402)などが、取引終了後にはTDK(6762)やトヨタ(7203)、三菱地所(8802)、ソフトバンク(9984)などが決算を発表する予定です。

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2週前

決算後に目標株価の引き上げがあった銘柄は

先月20日の安川電機(6506)を皮切りにスタートした3月期決算銘柄の本決算発表も今週がピークとなりますが、一足早く決算を発表した銘柄では業績や目標株価の見直しもある程度進んだと思われます。そこで今期は決算発表が本格化する前の先月26日までに決算を発表したTOPIX500採用の3月期決算銘柄を対象に決算後に目標株価引き上げがあったもの(足元の株価を上回るもののみ対象)をピックアップしてみました。

そのなかで複数の目標株価の引き上げがみられたがジャフコ(8595)とエムスリー(2413)、オービック(4684)で、ジャフコは決算発表翌日の株価の反応が冴えなかったにも関わらず決算発表後に3社が目標株価を引き上げています。また、決算発表翌日に株価が大幅高となったエムスリーとオービックでも決算発表後に3社が目標株価を引き上げています。

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もう一つのヒント

明日の決算発表スケジュールは

今月に入って大型連休の谷間や連休明けということもあって一旦、企業数が大きく減った決算発表ですが、明日から再び決算発表が活発となります。こうしたなか明日は三菱重工業(7011)やSUBARU(7270)などのほかに、三井物産(8031)や三菱商事(8058)などの大手商社なども決算を発表する予定です。

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3週前

5月は大手ドラッグストアーの店舗で利用できる優待が充実

5月に本決算を迎える5月期決算企業や中間決算期となる11月期決算企業の数は限られます。それでも5月もいろいろな株主優待制度をみつけることができます。株主優待制度の定番であるクオカード、おこめ券、割引優待券、選べるギフト、名産品などをはじめ、りんごジュースやぶどうといった優待なども揃っています。

そしてこうした優待制度のなかでも5月は大手ドラッグストアーの店舗で利用できる優待が多いのが特徴で、コスモス薬品(3349)では優待制度が拡充(100株で買物優待券4,000円分または全国共通おこめ券8kg分が、買物優待券5,000円分または全国共通おこめ券10kg分)されています。なお、銘柄によって権利付き最終売買日が異なるので注意が必要です。5月15日が権利確定日となる銘柄は10日、20日が権利確定日となる銘柄は16日、5月末が権利確定日となる銘柄では26日が権利付き最終売買日です。

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もう一つのヒント

連休明けの決算発表スケジュールは

3月決算企業の本決算発表が今週から本格化しています。8日は連休明けということもあってまだ決算発表を行う企業は限られますが、LIXILグループ(5938)やマルハニチロ(1333)などが決算を発表する予定です。

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3週前

米自動車ローン問題:リスク急拡大で、利上げの重石に

● 米自動車販売は、悪天候要因のあった3月からはやや持ち直すとみられている。しかし、トレンドとしては減速が続くだろう。背景にある自動車ローン問題は依然悪化傾向にある。

● メーカーの販売促進策等で"ディープ・サブプライム層"向け貸出が増加、延滞発生は過去最高水準。銀行は厳格化に方針転換しており、販促抑制と相まって「合成の誤謬」のリスク。

● 米自動車ローンは住宅ローンに比べ市場がごく小さく、証券化商品も少ないため、かつてのように影響が世界に拡散する可能性は低い。しかし、中小金融機関の損失拡大や個人消費等への影響は不可避。米国の金利上昇を阻む要因として注視する必要がある。

米国の自動車販売と自動車ローンの現状

米国の5月2日に、4月の自動車販売台数が発表される。3月は、悪天候で市場予想を大きく下回ったが (図表1)、今回は若干の回復(3月16.53→4月17.1)が見込まれている。

しかし、一時的な揺り戻しがあったとしても、自動車販売は総じて苦戦が強いられ、米国の個人消費の頭を抑えそうだ。図表2の通り、自動車販売は自動車ローンと密接に結びついている。16年末時点で、新車の85.2%、中古車の53.5%が借り入れで購入されているためだ。(因みに日本では、それぞれ新車で2割、中古車で3~4割程度と推定される。)ところが、この市場は以下の通り、問題が一層深刻化している。

米自動車ローンの問題点

米国の自動車ローン残高は16年末で1.16兆ドル(120兆円)に上る(図表3)。日本については同様の統計がないが、これよりはるかに小さく、恐らく一桁違う規模とみられる。

これだけの残高拡大を支えてきたのは、自動車メーカーがディーラーに支払う "インセンティブ"(販売奨励金)である。自動車市場の競争激化でインセンティブの引き上げが続いた。昨年9月には、過去最高の1台当たり40万円にも上ったとされる。

しかし、このインセンティブ目当ての過度な営業で、いわゆる"サブプライム層"(定義はまちまちだが、信用力評価スコアが概ね500~660以下の個人)などのリスクの高い個人に対するローンが急拡大した(図表4)。特に最近では、信用評価スコアが300-500という"ディープ・サブプライム層"向け貸出の増加が目立っており、昨年1年間で残高は14.57%も増加した(エクスペリアン社のデータ)。

膨張した自動車ローンの弊害は最近になって顕在化している。雇用や賃金の改善で、クレジットカードなど他の個人ローンでは延滞の発生が沈静化しているのに、自動車ローンについては急速に増加しており、リーマンショック時に記録した過去最高水準に近づいている(図表5)。今後も、ディープ・サブプライム層向け貸出の増加などから、当面延滞の発生増加は避けられないとみられる。

こうした状況に対応するべく銀行も動き出している。直近17年3月末の銀行の貸出動向調査によると、銀行の貸出基準は「厳格化」の度合いが過去最高を更新している。銀行の貸出厳格化とメーカーのインセンティブ抑制の動きで、自動車ローンの資金需要は今年に入って一気に減退している (図表6)。

今後の見通し:リスクが世界に拡散することはないが、米国の景気動向への影響大

現在、自動車ローン市場のメインプレイヤーは図表7の通りである。自動車メーカー系と、銀行系が上位を占める。新車ローンはこうした大手に集中しているが、中古車ローンではトップ20社は4割程度を占めるに留まり、ディーラー系金融などの小規模業者が乱立している。

これらの自動車ローン残高のうち、約2割がサブプライム層向けとなっている。特に、金融会社とディーラー系金融では貸出の約7割がサブプライム層向けとなっており深刻である。一方、銀行や自動車メーカー系では、サブプライム層向けは13%程度と低い。

今後の懸念材料の第一は、中堅中小の金融機関の引き当ての増加と新規貸出の伸び悩みである。それでなくても金利上昇が個人ローン全体の新規実行額にマイナス影響与えつつあるが、自動車ローンについては、それに加えて銀行の審査厳格化がマイナスに作用する。メーカーの販売インセンティブも、日産など各社で抑制の動きが出始めている。

こうした抑制策は、それぞれのプレーヤーの損失回避のためには正しい動きである。しかし、全社が一斉に同じ動きに走った場合、市場を冷やし過ぎ、むしろ損失を拡大しうるという「合成の誤謬」のリスクが懸念される。

第二に、国内個人消費への影響も懸念される。自動車販売は、米国の耐久消費財の4割弱を占め、他の個人消費項目よりも変動が激しいため、個人消費の大きな変動要因となる。自動車販売の更なる落ち込みは、個人消費の落ち込みに直結する。

半面、2007年以降の住宅ローンのサブプライム問題のように、リスクが世界に拡散することは極めて考えにくい。サブプライム住宅ローン残高はピークで120兆円程度あったのに対し、サブプライム・自動車ローンは、25兆円程度と5分の1程度しかない。証券化されているのはさらにその1割程度の4兆円強である。しかも、期間が5~6年と短いため、比較的すぐに返済(または貸倒れ)となって入れ替わる。

このように、仮に自動車ローンの延滞がさらに大幅に増加しても、世界の金融市場に対する影響は限定的である。しかし、米国景気への影響は無視できない。市場の大半が今年あと2回程度の追加利上とこれに伴う中長期金利の上昇を想定しているが、こうした見方に対する懸念材料の一つとして注目する必要があるだろう。

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